
私は、10代の頃JRの駅にあった「わたしの旅スタンプ」を集めていました。観光よりスタンプ集めがメインだったこの旅は、友人に話すと呆れられましたが、スタンプにはその土地の名所旧跡が描かれているので、地理の勉強にもなる旅でした。
その旅の中で、思い出に残っているのが中央東線鈍行の旅です。今は廃止されて夜行列車が走らない線になった中央東線ですが、当時は夜行急行「アルプス」と上諏訪夜行と呼ばれた普通列車がありました。アルプスには乗ったことはありませんが、上諏訪夜行は昭和62年に一度乗っています。
上諏訪夜行は、当時のセミクロスシートの115系普通列車でした。これは昼間の普通列車と全く同じ車両でした。東海道線の大垣夜行と違って、満員にはならない列車だったので、ロングシートに横たわって寝ることも可能でした。
こういう夜行列車は、ダイヤの遅延をカバーするためか、途中駅で長時間の停車があるのが常です。この上諏訪夜行も、甲府で40分ほど停車時間があり、友人と散歩しようとした記憶があります。甲府といえば武田信玄の「武田神社」が有名ですが、当時は今のようなインターネット地図はなく、ただ駅の周辺に出ただけでした。
このような、途中駅をいくつも降りる旅は、先に一番遠い駅に行って、戻りながら駅を巡るのが、私の旅では鉄則でした。一番遠い駅は松本で、松本城の天守閣には登っています。松本滞在は2時間でしたが、松本城と旧開智学校を見て、駅の立ち食いそばで信州そばも食べています。
帰りで降りた駅では、日野春と竜王が印象的でした。日野春は特急の通過待ちで10分ほどの時間でしたが、この駅は南アルプスの甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳が同時に見晴らせる駅でした。その後、何度か中央東線の鈍行に乗るとこの駅が楽しみになりました。
竜王は、武田信玄の治水事業の跡である「信玄堤」の最寄り駅です。当時は現在のような、高さのある堤防は作れない時代だったので、信玄の治水事業は水の勢いを弱めるためのものでした。川の流れを変えて大きな岩にぶつけて勢いを弱め、信玄堤も水を下流の方向に流れにくくする技術でした。歩き回りましたが、当時は信玄堤を見つけられなかったので、いつかリベンジしたいという理由で覚えています。